名画「で」遊ぶシリーズ2/レンブラント『夜警』
何日か前に、ノリノリでこんなのやった。 この時はまだ(?)の状態だったんだけど、一部の方には割と好評で、有難いことにリクエストなんかもいただいて、図に乗るに決まっておろうありがとうございます。
このシリーズの免責事項を決めておこうか
そんなワケで、ネタが尽きるか苦情がくるか、心が折れるか飽きるかするまで不定期シリーズ化。とはいえ、私は別に美術・芸術に特別詳しいワケではない。
あくまでクイズの武器=美術・文学ジャンルを使い込んだ過程で知り得た情報をおぼろげに繋げただけの「美文ゲーマー」であることを踏まえて、今後もコレ系の暴走を生ぬるい目で見守っていただけると大変ありがたい。
あと、あくまで「遊ぶ」だから。ここ大事。
さて、今回のお題はフォロワーの三森様(@Yuki3Mori)からのリクエストで、17世紀オランダの画家(フェルメールと一緒だね)レンブラント・ファン・レインの『夜警』を。前回、13人でヒィヒィ言っていたのに…。
多いよ。鬼ですかwww
アムステルダム国立美術館所蔵の、正式名称『フランク・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ラウテンブルフ副隊長の市民隊』。長ぇよ。
どう見ても夜の情景なのに、実は昼間のことだったりする。これは素材や保存状態が作品を痛めつけた結果らしい。おまけに3度もマジキッチーな観客からナイフだの酸だのを浴びている。不憫なコだ。
さすがに約20人を丁寧にいじるとなると、私の心がメキメキと軋むような音を立て始めるので雑にいくよ!
隊長が熱弁をふるうも、副隊長は幼女に釘付け
向かって左が隊長、右が副隊長。何度も何度もこの画を眺めていると、副隊長の顔が堺雅人の横顔にしか見えなくなってくるから不思議だ(同意者求む)*1。
ちなみにこの副隊長、レンブラントに「背を高く描いてくれ」と追加金を払ったにも関わらず、構図の都合上より小さく描かれてしまったとか。せこいぞ、副隊長。
さて、これから隊を率いて市街に繰り出さんとしているわけだが身振り手振りで何かを伝えようとしている隊長。伝えようとしている割には副隊長のことを全く見ておらず、おそらく端で構えている2カメに語りかけているものと思われる。
で、副隊長はといえば隣人のご高説には全く関心を示さず、背後にいる幼女をじーっと見つめている。どうやら幼女萌えの病気をお持ちのようだ。
マスコット幼女は実はいじめに遭っている
その視線の先の幼女。服の色が共通することから、副隊長とは親子なのかもしれない。むさくるしい野郎共の草原に咲く一輪の雛菊のような、マスコット的存在のハズ。
でも、マスコットはこんな顔しない。
おまけに背中に何? 鶏の死骸? 現代なら「こいつは昨日学校でウ○コしました」という紙をこっそり貼られている感じ? 昔からあるベタベタのいじめ方だ。
「パパァー、何コレ早く取ってよぉー」とでも言いたげな表情が哀れだが、当のパパは離れているのでそれが伝わらず、「うちの娘今日も可愛い♡」と目を細めているにとどまっている。親子とは。 ※妄想です
実際は勝利の象徴として提げられたモノらしいのだが、意味が何であろうと腰に死骸がぶら下がっているなんて気持ち悪いに決まっている。おまけに前にいる鉄仮面は何だ、怖いぞ。黒魔術師? 何で隊にそんなのいるのww(幼女もだけど)
昼間からこんな猟奇的な隊が歩き回っていたらイヤだ
ほぼ全員の顔が、何かの返り血を浴びている。新選組の池田屋凱旋じゃあるまいし、こんな輩に公道を歩かれては十戒の如く市民がサーッと二つに割れること間違いない。
ちなみに、向かって左右と真ん中が、作中数少ない正面視なのだが(左のヤツのキメ顔ェ…)、真ん中は隣の人の手に遮られて半分しか顔が描かれておらず無個性に等しい。これはおそらく、レンブラントに支払った額が少なかったため削られたと推察。
恋するオヤジのBL
隊旗を掲げる右端の人はそれなりに支払いが良かったのか、登場人物の中で最も爽やかに、誇らしげに描かれている。ちなみに何度も見ているうちに、若い頃の井上順にしか見えなくなってしまうから不思議だ(同意者求む)*2。
そんな旗持ち(暴走族かww)を見つめる熱視線。出処は左端の熊野郎だ。はためく隊旗越しに見え隠れする順の凛々しい横顔で劣情をもよおし、前列の影に隠れて下半身がどんなことになっているかわかったもんじゃない。おまわりさん!(
まとめ:節子、それ市民隊ちゃう、愚連隊や
左端の赤服も何とかしていじろうとしたけれど、ここらで心が折れたのでおしまいにする。まとめると、これを「隊」と呼ぶには無理がある。
バラバラの装備、バラバラの目線、バラバラの心。隊を名乗る集団たるもの、どこかひとつくらいは「おそろい」があってもいいのではないか。
よって、この光景はアムステルダム市街を護衛する集団の決起集会ではなく、逆に市街をゲリラ的に襲撃して金品を狙う愚連隊のアジトを描いたものと思われる。
ちなみに、いつからこの作品がこの名で呼ばれるようになったのかはわからないが、19世紀の哲学者・ラッサールが自由主義国家を揶揄して「夜警国家」と呼んでいた(クイズに出るよ)ので、それ以前に命名されたのだろう。
ラッサール自身、この画を鑑賞したのかもしれない。そして、昼と夜が逆転した光景や統率感の無さが自由主義国家の姿に被って、この画になぞらえて「夜警国家」という言葉が生まれたのかもしれない。
蛇足:『夜警』はレンブラントの「代表作」にして「失敗作」
一人、二人くらいの肖像画を専門にチマチマ描いていれば良かったのに、こんな集団肖像画に手を出しちゃったのがレンブラントの誤算だと思う。第一、この人数全員が満足するものなど描けるはずがない。
当時大流行のキアロスクーロ(明暗法。クイズに出るよ)を駆使して大胆なコントラストを出してはみたものの、同じ額を払ってこれだけ露出に差があったのでは、クライアント側の一部には不満に思う輩も多かったはずだ。
こいつらなんか激おこだったに違いない。
実際、この作品以降、レンブラントへの肖像画受注はうなぎ下がり。おまけに嫁のサスキアにも先立たれて、乳飲み子一人抱えて貧に窮することになる。
『夜警』さえ受注しなければ、レンブラントは高名な画家という高みから一度たりとも転がることはなかったのではないだろうか。どうだろうか。